カフカ的小説 「死亡したことをたしかめるために医者はいない」

 エス氏はコーヒーを飲んでいた。エス氏はお酒をまったく飲むことができなかった。ピンクというあだ名されていた看護師には「風邪もなおせないくせにどうして手術ができるのよ!まったく、たよりがいがあるんだかないんだかわかったもんじゃないわ!」と毎日どなられていた。
 ある日、エス氏は手術中の患者の心臓がとまったとき、「もう手遅れじゃないですか」と助手にエス氏は微笑みながら
「死亡したことをたしかめるために医者がいたら医者の意味がないじゃないですか、それなら僕は医者をとっくにやめていますよ」
 エス氏はおもむろに患者の心臓を手でさわってゆっくりともみほぐしたあと、悪い組織を手で触ってつきとめたのち、メスで一寸の乱れもなく切り取った。
 家につくとエス氏はぐうのねもでなかった。壊れかけのパーコレーターで淹れたコーヒーを飲みながら本を読んだ。そしてエス氏はバイオリンの練習をした。バイオリンの練習がエス氏の魂をやさしくなでてくれる。すると、そこに執事のロゼッテル・マイヤーさんがあらわれた。「わたしは死神だ。お前の命はあと3日、好きに生きるがいい」そういうと執事のロゼッテル・マイヤーはエス氏の机と万年筆を取り上げておもむろに何かを書き出した。
 エス氏はみるからに執事のロゼッテル・マイヤーだが自称「死神」にたずねた
「いったいそれは何ですか」
「これはおれの血だ。血でものを書いているんだよ。そして、この書かれたものがシナリオとなり映画になる。だが、映画におれは興味はない。シナリオにおれの命がやどっているんだ。死神なのにおかしいだろ」
「そうですね、聖書はよんでいるんですけどね」

補足
キリスト教理解も哲学のうちです。 三位一体は新約聖書よんでいるくせに「わかりませ〜ん」とはいえないし、ヘーゲルの学徒としてはダメダメになってしまいます。すみませんでした。