『明暗』をよんでいて

 夏目漱石の『明暗』は日本文学のバイブルといってもいいかもしれないが、夏目漱石が臨終間際の作品なため<切迫した雰囲気>がかもしだされておりあまりに<のめりこみ>すぎたり、速読すると神経衰弱になる恐れがある。密度が濃い。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の英訳をせっせとかきこんでいた神経質ぶりが随所に垣間見ることができる。しかし、これは西谷啓治先生が論考でとりあつかった作品でもあり、人間のエゴイズムをこちこちと鉛筆でいっこいっこ塗りつぶしたそのさきにみえる人間の心の解剖が見事になされている。まだ中盤だが、艱難辛苦しながら読みす進めていきたい。
 そして、この『明暗』を医学の倫理学としてひもといていきたい。私の阿呆な頭蓋の中身ではとうてい解剖することができないので、カントの『純粋理性批判』およびヘーゲルの『精神の現象学』の人倫においておいて五回程、読み込んでいきたい。