沼津の本屋さん

 京都には関西特有の<古本屋ネットワーク>が存在する。沼津の古本屋さんは桃色の本が陳列されているので眼のやり場にこまり、乙女が入りずらい「場所」である。しかし、<本を見る眼>は哲学科で鍛えられたため、「こころとからだ」を考察するための本が安売りしていたので嬉しかった。

 北杜夫先生の『楡家の人びと』は何度か文庫本で上巻までいきつくことができるが、下巻の途中で息切れをしてしまい読了することができなかったので単行本を買うことができて本当に善かった。この作品は北杜夫先生の一家の物語でトーマス・マンの『ブッテンブローグ家の人々』を参考に自伝風にアレンジして医者の家族の物語を戦争の激動との歴史を巧みにもりこみながらユーモラスに描いている。北杜夫先生のおやじさんは歌人斎藤茂吉さんで医者をやりながら歌を書いていた。聴診器を頭蓋骨にあてて「大丈夫です」と精神科医とは思えない治療行為が『楡家の人々』にはかなりおやじを脚色なのか実話なのかわかりかねる表現で描かれている。
 加賀乙彦先生の『火都』はまだ読んでいないので丁々発止と書くことはできない。ドストエフスキースタンダールの影響がみられることはあるかもしれない。

 私は書込みをしながら小説をよむことはあまりないが、医学関係の小説は哲学的関心に直結するので書込みをしながら読んでいきたいと思う。