カフカ的小説 「エム氏とクララ」

 エム氏は哲学者で魂について考えていた。そして、意識のことも考えていたので周りの学生からは奇人あつかいされていた。ある日、金平糖の精クララがエム氏の現前にずかずかとやって来た。「時を求めて旅に出るのよ、考えるのはやめなさい」とエム氏は閉口した。「しゃーねーか」重い腰をあげると、金平糖の精クララといっしょに旅に出た。金平糖の精クララは何故か白衣を着ていて、ポケットに青い万年筆をいれていた。他人にはみえないらしく、エム氏が金平糖の精クララと馬鹿噺をしていると、周りの人々がいぶかしげな眼差しを向けていた。金平糖の精クララは「あそこの店でジンジャーエールを飲みましょうよ」とエム氏をひぱっていった。エム氏は酒が飲めなかったので安心した。
 しかし、金平糖の精クララはゲーム理論の噺をしはじめた。これにはエム氏もまいってしまった。エム氏は数学の噺が嫌いだった。「PはMと主観と客観の関係であり、MはまたPの逆の関係もなりうるわけ、これを人間関係や心理学に生かすとおもろいとおもわへん」金平糖の精クララは関西人だった。エム氏は頭が痛くなってきた。するとラジオから「愛の歌」という曲が流れて来た。「クララさんどう思いますこの歌」金平糖の精クララは捨て台詞に「そうね、論理でわりきれないわ」といって足下からすーっと消えてしまった。