カフカ的小説 「回る男」

 その男は体操競技をやっていた。爪先から指先まで神経のゆきとどいた演技は<神わざ>であった。男は「あの時、あの瞬間に生まれていなかったら、今・ここにいる私はいない」と言っていた。Fという師は男の恩師だった。Fは体操競技を「秘すれば花、秘せざれば花べからず」と表現していた。男は<ヨーガの思想>と<クラシック・バレエにおける美しさ>を男の魂のあらわれである身体の動きと醸し出される動きをミックスさせて「安心の演技」を求めていた。男は不眠症アルツハイマー認知症をもつ祖母をもっていた。男は高等学校で高校生と対話しながら、教育の「場所」を模索していた。男は大学で教育臨床心理学を<我―汝>の師弟関係で学んでいた。C子は精神科医をめざしていた。解剖学にくわしく、論理学にもたいへん深い智慧をもっており、C子は男と昼や朝に「カフェ」で対話して、原稿用紙の裏に<対話の跡>をのこしていった。
 ある日、男は教師に呼び出されて「眼をつぶって高校生のころをおもいだしてごらん・・・・・・ゆっくりでいいんだよ」1時間がたつと男は論理的な思考ができないことがわかった。男は医師のところへでかけて解剖学を学び、高等学校でんぽ動きの伝承の「場所」として生かしていった。