カフカ的小説「Fがとんだ先」

 F氏は海外にでかけることにした。場所はスイスである。
F氏はまったくドイツ語ができなかった。Q夫人は頭をなやました。
「善い、通訳者がいればいいのねぇ」
「そんな都合のいい通訳者がいるわけないだろう」
 そこにとおりすがりのスイス国籍のM氏が通りかかり。
「ぼくでよければ通訳してあげますよ」
と紳士的な振る舞いで通訳をひきうけたくれたので、F氏は大喜び。

 F氏は国際会議場へ向かった。無論Q夫人も一緒である。
F氏は国連大使として記者関係者に話す仕事をもっていたのである。

「F氏議題のうえをすこしとんでみてください」

その声はM氏の声だった。

「あいよっと」
「ぱーん、ぱーん、ぱーん」
と乾いた銃で会場は一瞬にして静まり返った。
M氏がふとQ夫人をみるとその右手にはピストルが手の重みたえかねてドスリと
赤い絨毯におちた。長い時間だった。